ポータブル元素分析装置MH-6000Aとハンディ元素分析器MH-5000に関する、よくある質問と回答です。
【特記】
【はじめに】
- 測定原理の「液体電極プラズマ」について教えて下さい。
- アルゴンガス・ガス配管・排気ダクト・専用電源が不要って本当ですか?
- 測定対象や使い方の特徴を教えて下さい。
- MH-6000AとMH-5000、どちらがお勧めですか?
- 装置を試してみたいのですが?
- MH-5000の初期ユーザですが、どんな点が更新されていますか?
- 測定できないもの・苦手なものはありますか?
- 測定時間と必要な試料量は、どの位ですか?
- 電池でも動かせますか?
【必要な設備・備品・消耗品・保守】
【分光器の選択・感度】
【測定ノウハウ】
【技術資料】
Q:測定原理の「液体電極プラズマ」について教えて下さい。
メカニズムは 発光原理 をご覧ください。中央に狭小部を持つ専用容器に電気伝導性の試料を入れ、両端から電圧をかけることで狭小部にエネルギーを集中させ、沸騰により生じた試料中の泡の中にプラズマを生じさせます。
短時間(1msec以下)、局所的(1mm以下)に、7000℃近い超高温が生じ、これを繰り返して発光スペクトルを取得します。プラズマ発光分光分析では、ICP発光分光分析(略称はICP-AES 又は ICP-OES)が有名ですが、本手法もプラズマ発光分光分析に属します。
Q:アルゴンガス・ガス配管・排気ダクト・専用電源が不要って本当ですか?
高圧ガスは使いませんのでアルゴンなどの高圧ガス・ガス配管・排気ダクトは不要で、工事不要・ランニングコストの点でも有利です。電源も100Vの通常の電源があれば十分です。
Q:測定対象や使い方の特徴を教えて下さい。
測定対象は、液体試料中の元素の種類と濃度です。測定対象元素と推奨濃度帯は、元素別測定濃度帯 をご参照下さい。
ICP-AESはアルゴンガスやガス配管が必須ですが、弊社装置はアルゴンなどの高圧ガスを使わないことが最大の特徴です。装置は超小型で設置場所を選びやすく、特にMH-5000は飛行機に機内持ち込みできますので、出張のお供にも便利です。
Q:MH-6000AとMH-5000、どちらがお勧めですか?
まずはMH-6000Aでご検討下さい。
ポンプと組み合わせたフロー分析が可能、2つの分光器を組み合わせ可能、サファイア製容器も選べるのでSi測定やアルカリ性溶液の測定も可能、などの長所があります。
携帯性優先(手持ち移動)、少量試料(0.1mL以下)の場合は、MH-5000をお勧めします。
Q:装置を試してみたいのですが?
お試し用に、以下の選択肢を用意させて頂きました。
(1) オンライン相談会
(2) 発光スペクトル確認(有償、ただし初回無償)
(3) ご来訪
(4) 貸出(有償)
(5) 定量評価(有償)
装置の操作は簡単ですが、初めての試料では、希釈や酸添加などの前処理検討と、セル洗浄の検討が必要です。また、内蔵分光器の波長帯設定の検討も重要です。まずは (1)オンライン相談会 を行い、続いて (2)発光スペクトル確認 を行い、その後 (3)ご来訪 または (4) 貸出 に進むのが推奨ルートです。
(1) オンライン相談会
弊社及び弊社装置の紹介をさせて頂きます。15分程度で終了します。通常は(2)の最初のオンライン相談まで進み、全部で40分〜60分程度です。
(2) 発光スペクトル確認(有償、ただし初回無償)
発光スペクトルを取得し、測定対象元素の輝線(発光ピーク)の検出可否を確認します。
類似サンプルの濃度バリエーション2〜4検体を1グループとして扱い、最初の1グループのみ無償対応。追加は1グループごとに3〜5万円(税別)。以下の手順となります。
オンライン相談(目的元素と濃度帯、サンプルの特徴、送付サンプル数とサンプル量など)
→ [御社]サンプル準備
→ [弊社]発光スペクトル確認
→ オンライン報告会(前処理、検出可否など)
定量評価ではありませんので、濃度そのものの報告は行いませんので、ご了承願います。
(3) ご来訪
10時〜16時、昼休憩あり。試料持ち込み歓迎。
駅・空港からの自動車時間は、金沢駅50分/小松空港35分/小松駅30分です。送迎可。
(4) 貸出(有償)
5日間(到着日の6営業日後にご返送)で5万円(税別)
初日の訪問サポート付、ただし、日帰り困難な地域については別途お見積。
期間追加は1週間単位とし、3週間以上の場合は、消耗品の負担もお願いしております。
(5) 定量評価(有償)
前処理検討、定量評価を行います。また、ICP-MS等で求めた値も参考情報として添付します。
各検体 5万円 + 元素数×1万円(税別)
(類似検体の場合は、2検体目から 2万円 + 元素数×1万円(税別))
なお、ろ過・希釈・添加以外の前処理(酸分解など)が必要な場合は、事前相談の上で、別途、前処理料金を追加させて頂きます。
Q:MH-5000の初期ユーザですが、どんな点が更新されていますか?
・樹脂製測定容器LepiCuve-02 に比べて、石英製測定容器LepiCuve-C は、感度、再現性がどちらも大きく向上しています。
・内蔵分光器のバリエーションが増えました。当初、内蔵分光器は s2086 のみでしたが、現在は s2035, s2043 を標準で用意してあり、ご利用用途に合わせて最適なものをお勧めしております。
・元素別測定濃度帯には、推奨溶媒の情報を追加しましたので、是非、改めてご覧ください。
・その他、社内には高い分解能の分光器で取得した発光スペクトルのバリエーションを準備してありますので、実サンプル対応のご提案のスキルが向上しております。複数成分の光学干渉が気になる場合は、お気軽にお問合せ下さい。
Q:測定できないもの・苦手なものはありますか?
・固体は、直接測定できませんので、熱や酸で溶かしたり、溶出液を作るなどの液体化が必要です。
・浮遊物は、流路の詰まりの原因となります。濾過か酸分解により除去してください。
・有機溶媒は、電気伝導性が不足して測定できませんが、メタノールやエタノール等の酸と混ざるものは測定対象となります(酸濃度は高めが推奨)。炭素由来の発光スペクトルによる干渉の影響が出ます。
・粘度の高い液体(水より高い粘度であることが一目でわかるレベル)や、発生した泡が消えにくい液体は、安定性が確保しにくいので希釈を推奨しています。
Q:測定時間と必要な試料量は、どの位ですか?
発光スペクトルを1本取得する場合の概算
MH-6000A: 1分以内、5mL
MH-5000 : 1分以内、0.1mL
定量測定用に安定性重視の条件で測定する場合の1試料の概算
MH-6000A: 約5分、15mL
MH-5000 : 約2分、0.1mL
検量線作成時の濃度数と試料数の合計を乗じて、測定時間と試料量をお見積り下さい。
Q:電池でも動かせますか?
MH-6000Aは電池駆動できません。
MH-5000は単3電池6本で動作します。アルカリ電池をご用意頂けば、通常は100試料以上の測定が行えます(回数は電圧印加条件に依存)。充電池(ニッケル水素など)は電圧が不足しますので使えません。なお、電源が確保できる場所では、電池を抜いて、ACアダプターをご利用下さい。
Q:必要な設備・備品・試薬などを、教えて下さい。
外出先で事前に予定した実験を行う場合は、調製済試薬だけで、ある程度の実験は行えますが、事前の予備実験や、試料調製のためには、設備等が必要となります。
実験室の推奨環境は以下の通りです。
・超純水装置(超純水パックでも代替可)
・測定対象元素の標準液(ICP用や原子吸光用の単元素標準)
・強酸(3mol/L以上の硝酸、3mol/L以上の塩酸、他の酸は必要に応じて)
・試薬棚(上記の試薬類の保管)
・酸濃度調製用のガラス器具(ただし、濃度調整済の酸を購入すれば準備不要)
・マイクロピペット(10-100uL, 100-1000uL)+ピペットチップ
・調製した試薬、測定液を保管するポリ容器
例:1.5mLのマイクロチューブ、25,50mLの遠沈管、100,250,500mLのポリ瓶
・廃液ボトル
(以下、酸分解が必要な場合)
・加熱装置(ホットプレート、ヒートブロック、マイクロウェーブ分解装置など)
・排気ダクト(ドラフトなど)
更に、試料によっては他の装置が必要となることがあります。それぞれの必要性、必要な設備などについては、お問合せ下さい
Q:MH-6000A用のポンプについて、教えて下さい。
MH-6000A用ポンプの要件:
・耐薬品性があって、洗浄しやすく、脈流が少ないこと
推奨ポンプの種類と特徴:
(1) シリンジポンプ
・利点:比較的安価
・欠点:サンプル入れ替えが面倒
(2) 脈流の少ない低速対応のチュービングポンプ(ペリスタリックポンプ)
・利点:作業性が高い
・欠点:低速対応品は、普及品より高価
流量:標準 1mL/min
(1) 電気伝導率が高いサンプルの場合
・更に速い方が安定性が向上します。1.0-1.5mL/min程度をお勧めします。
(2) サンプル量が少ない場合
・遅くても動作します(安定性は低下することがあります)。0.2mL/min以上をお勧めします。
Q:必要な消耗品と交換の目安、保守項目を教えて下さい。
消耗品のラインナップは以下の通りです。
【MH-6000A用の測定セル】
・石英製測定セル LepiCuve-SC(通常)
・サファイア製測定セル LepiCuve-SA(酸性/アルカリ性両用、Si測定用)
【MH-5000用の測定容器】
・石英製測定容器 LepiCuve-C
保守項目は以下の通りです。
・白金電極
液体電極プラズマでは、白金電極はプラズマ生成に直接関与しませんので、プラズマ生成に伴う消耗はありません。ただし、濃い液(特に金属皮膜を生じやすい液)の場合は、白金電極表面に付着しますので、表面磨きや交換を行う必要が生じます。頻度は液の種類と濃度に依存しますので、ご相談下さい。
・MH-5000の裏フタのPTFEパーツ
白金電極の表面磨きや交換のために電極の抜き差しを行うと、徐々にPTFEパーツの電極穴が拡がり、コネクタに液が届きやすくなります。コネクタに液が届くと、コネクタ表面からZn, Snの溶出が生じます。特にZnは測定に影響が出やすいので、電極の抜き差しの頻度が高く、かつ、Znを測定対象とする場合は、ご相談下さい。
Q:お勧めのアクセサリー類はありますか?
以下の専用ケースがありますので、移動が多い場合は、是非、お買い求め下さい。
【MH-6000A用】
・樹脂製耐水ケース
【MH-5000用】写真
・キャリングケース(肩掛け、ACアダプターなどの小物入れあり)
・樹脂製耐水ケース(小型、軽量)
Q:分光器の選択とは、どんなことですか?
分光器とは、得られた発光の波長別の強度を求める装置です。弊社装置には、光学設定が固定の小型分光器が内蔵されています。
このような分光器での重要な選択項目は、波長レンジ(観測できる波長帯の範囲)と、波長分解能(近接ピークをどこまで区別できるか)です。波長レンジが広いほど、多くの元素の輝線を観測できます。一方、波長レンジが広いほど、波長分解能が大きく(粗く)なります。
波長分解能が不十分だと、測定対象元素の輝線(元素固有の発光ピーク)と、その他の発光とを区別できなくなります。したがって、波長レンジと波長分解能とのバランスを考えた分光器の選択が重要です。
参考資料(モデル紹介)
Q:お勧めの分光器は?
以下の3つの内蔵分光器が推奨で、モデル名として採用しています。
s2086(波長レンジ:200nm-860nm)
s2043(波長レンジ:200nm-430nm)
s2035(波長レンジ:200nm-350nm)
MH-5000の元素別測定濃度帯 は、元素別の推奨モデルを記載したシートと、モデル別3シートの4シート構成です。対象元素についての性能をご確認下さい。元素別発光スペクトルMH-5000 s2086 と 元素別発光スペクトルMH-5000 s2035 は、各元素に対する発光スペクトルの例も一覧として公開していますので、ご参照頂けます。
MH-6000Aでは、2つの分光器まで内蔵できますので、s2086で広い範囲を観測して、s2035またはs2043にて重金属の多い領域を高分解能で観測する、2つの分光器の同時活用が可能となります。他の分光器設定もありますので、ご要望を伺った上で、最適なご提案をさせて頂きます。
Q:分光器別・元素別の発光スペクトルの例はありますか?
分光器の選択については 「Q:分光器の選択とは、どんなことですか?」 をご覧ください。
以下、内蔵分光器別に、代表的な溶媒のスペクトルと元素別スペクトルを一覧にしてあります。
MH-5000 s2086(波長レンジ 200nm-860nm)
(標準品)広波長域(対象元素最大)
MH-5000 s2043( ドキュメント準備中 )
(標準品)重金属向け
MH-5000 s2035(波長レンジ 200nm-350nm)
(標準品)重金属向け(鉛除く)
MH-5000 s3238(波長レンジ 320nm-380nm)
(特注品)Ag, Cu, Cr, Pd, Rh など
MH-5000 s3347(波長レンジ 330nm-470nm)
(特注品)Ag, Ca, Co, Cu, Cr, Ga, Hg, In, Mg, Mn, Mo, Ni, Pb, Pd, Rh, Ru, Sn, Sr, Tl など
MH-5000 s5060(波長レンジ 500nm-600nm)
(特注品)ピーク重なり回避、Mg, Na, Tl など
Q:元素別測定濃度帯の見方を教えて下さい。
元素別の推奨モデルを記載したシートと、モデル別3シートの4シート構成です。元素別に最も観測しやすい波長、推奨溶媒の情報も掲載してあります。
元素別測定濃度帯 は、各元素の標準液の希釈液を使った弊社での実験結果に基づき、検出限界と推奨濃度帯を示しています(装置や測定容器の個体差がありますので、保証値ではありません)。実際の試料では、有機物の混在、他元素の混在などで、推奨濃度帯でも検出できないことがあり得ます。
MH-6000A対応の一覧は作成中ですので、ご興味ある元素について、個別にお問い合わせ下さい。
Q:調整項目には、どんなものがありますか?
【試料調製】
溶媒種類、溶媒濃度(標準は0.1mol/L硝酸)
個々の元素については元素別測定濃度帯の◎〇△×をご参照下さい。
【本体の電圧印加設定】
電圧(V)、パルスON時間(msec)、パルスOFF時間(msec)、パルス数、繰り返し回数
調整の初期値として、以下をご参照下さい。定量性優先の、時間長めの設定です。
MH-6000A(電圧高め、ただし、1200Vが装置上限)
0.1mol/L硝酸の場合、1000V, (ON 10msec/OFF 300msec)x50パルス, 15回
1 mol/L 硝酸の場合、 700V, (ON 2msec/OFF 300msec)x50パルス, 15回
MH-5000
0.1mol/L硝酸の場合、 750V, (ON 2msec/OFF 40msec)x40パルス, 15回
1 mol/L 硝酸の場合、 600V, (ON 2msec/OFF 60msec)x40パルス, 15回
調整方法については、以下のドキュメントが参考になります。
【ポンプ(MH-6000Aのみ)】
推奨は流量 1.0mL/分です。試料が少ない場合は0.2mL/分、電気伝導率が高い場合は1.5mL/分程度まで幅を拡げて最適化することをお勧めします。
参考:MH-5000測定条件設定手引き
上記は、MH-5000の詳細な調整方法を説明していますが、もう少し簡易に調整しても最適に近い性能が出せますので、MH-5000用の簡易版と、MH-6000用の簡易版の発行を予定しております。
Q:溶媒種別や溶媒濃度に関するノウハウがあれば、教えて下さい。
【電気伝導度の管理】
原理上、検量線作成時と試料測定時の電気伝導度を揃えることが重要なので、試料の電気伝導率やバラつきを想定して、どうやって電気伝導度を揃えるか、という検討が必要になります。塩濃度が高い試料の場合、塩だけでも液体電極プラズマは生じますが、酸を添加させて電気伝導度を高めに調製する方が測定の安定度が上がります。
【溶媒種類・濃度の選択】
特に制約がない場合は、元素の標準液と同じ溶媒・濃度を採用すると、検量線作成の試薬調製が簡単です。また、元素別測定濃度帯に、硝酸0.1mol/L、硝酸1mol/L、塩酸0.1mol/L、塩酸1mol/L の4つの溶媒との相性をマークで表示していますので、ご参照下さい。また、その左には、測定限界を調べた時に採用した溶媒の種類と濃度も示しています。MH-6000Aについては一覧がありませんが、溶媒との相性は、ほぼ同じです(酸濃度は少し高めの方が良いかもしれません)。
【アルカリ性溶液の取り扱い】
試料がアルカリ性で、アルカリ性のまま測定したい場合は、MH-6000Aでサファイア製セル(LepiCuve-SA)をご利用下さい。
電気伝導度を一定に保つために、強アルカリである水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、あるいは弱アルカリであるアンモニアを使います。
水酸化カリウムや水酸化ナトリウムの電気伝導率は、塩酸・硝酸と比べて小さいです。水酸化カリウムや水酸化ナトリウム濃度を、塩酸・硝酸の2〜5倍程度にすると、同等の電気伝導率になります。
アンモニアでは、電気伝導度が不足気味なので、目的元素の感度が十分あって、弱い発光でも観測できる場合にのみご利用下さい。
石英はアルカリ性溶液に弱いので、石英製のMH-5000用測定容器(LepiCuve-C), MH-6000A用測定セル(LepiCuve-SC)で、アルカリ性溶液の測定を行うと、劣化(狭小部の太り)が急速に進みます。pH11では使用実績ありますが、それを超えるpHでの利用は避けて下さい。
【溶媒濃度が高い液の取り扱い】
溶媒濃度が高いと溶媒依存のピークが強くなります。元素別発光スペクトルMH-5000 s2086、元素別発光スペクトルMH-5000 s2035 の前半に、主な溶媒の溶媒ピークが掲載されていますので、ご参照下さい。また、弊社には研究用グレードの高い波長分解能の分光器で得たライブラリ情報もありますので、目的元素の輝線と溶媒ピークの重なりが気になる場合は、お問い合せ下さい。
【電気伝導度が高い溶液の取り扱い】
電気伝導度が高い(例:硝酸・塩酸で1mol/L以上)場合、短時間に大量の電流が流れるため、コンデンサ容量の関係で、繰り返しパルス印加の途中から、設定電圧に届かないことがあり得ます(印加前半と後半で、電圧印加時に生じる音の違いを感じる場合は、これが原因です)。OFF時間中に給電して電圧を戻しますので、ONを短めに、OFFを長めに設定することで電圧低下を回避できます。大凡の目安として、ONに対して20倍〜50倍程度(例:ON=2msec, OFF=40〜100msec)がお勧めです。
Q:元素別のノウハウがあれば、教えて下さい。
Au, Ag, Cu, Pd: 容器内部に薄膜として付着しやすく、液体電極プラズマと分光器の間の透過率低下を引き起こします。洗浄液としては金のエッチング剤として使われているヨウ化カリウム系の工業試薬がお勧めです。また、測定対象の金濃度が高い場合は、このエッチング液で試料を希釈すると、付着が予防できて洗浄の手間を減らすことができます。
Li, Na, K, Rb, Cs: アルカリ金属は、別のアルカリ金属を内標準として採用することで測定精度が大きく改善されますので、内標準法の採用を強くお勧めします。
Fe, Cr: 酸化物が容器内部に付着して透過率低下を招きやすいです。酸化性の酸である硝酸ではなく、還元性の酸である塩酸(1〜2mol/L)を推奨します。
Cu: 強い発光が得られる Cu(I)324.754nm と Cu(I)327.754nm は、s2086では300-320nm付近にある水に起因する大きなピークと重なって検出しにくいので、s2043, s2035 の採用をお勧めします。
Ag: 最も強い発光が得られる Ag(I)338.289nm が硝酸ピークと重なっているので、検出限界近くでは、硝酸よりも塩酸の方が検出限界が良くなります。ただし、濃度が濃いと塩化銀の沈殿を生じるので、試料調製の際にはご注意下さい。
As, B: 他の元素に比べて、測定容器の消耗(狭小部の拡大)に起因する感度低下が著しいので、消耗品の交換サイクルは早めがお勧めです。
Zn, Sn: MH-5000で、稀に白金電極を固定しているコネクタから溶出されるZn, Snが、電極を介して試料に混入することがあります。Znピークが急に極端に高くなることで発見できます。酸濃度が高い試料等で、フタの裏面への試料の液飛びが多い場合に生じやすいです。
320nm-400nm付近にピークを持つ元素に共通: 水に起因するピークが色々とありますが、その中で300-320nm付近のピークが最も強いです。内蔵分光器の制約で、サチュレーションを起こすとピークが右に太るため、発光量が多いと水ピークの右側の領域のピークが観測できなくなります。波長分解能が高いと、影響が小さくなりますので、まずは s2086→s2043→s2035 という選択肢をご検討下さい。その他の対策は、発光量を減らす(電圧を下げる、ON時間を短くする、繰り返し数を減らす)ことになり、対象元素の発光ピーク強度、安定性などを考えた調整になります。
Q:お勧めの内部洗浄方法を、教えて下さい。
水、酸、専用の洗浄液など、汚れによって、対策が分かれます。
アルカリ金属(Na, K など)は超純水を流し続けることが最適です。
汚染源の元素に対して、専用の洗浄液があれば、ご利用下さい。Au, Ag, Cu, Pd については、元素別ノウハウに記載のヨウ化カリウム溶液が効果的です。
一般には、酸を流した後、超純水を流します。超音波洗浄機の利用も選択肢としてあります。
容器内面への付着による透過率低下が生じている場合は、1-2mol/L程度の塩酸を使って、測定の時と同じようにプラズマ生成させることで、洗浄効果が得られます。専用ソフトには、繰り返し印加しながら特定元素のピークが現象していく様子をモニタリングする機能もありますので、ご利用下さい。
詳細は、以下をご参照下さい。
石英製測定容器の使い方
Q:ノウハウに関するドキュメントはありますか?
トピック別で、以下のドキュメントがあります。ご参照下さい。
石英製測定容器の使い方
MH-5000 測定条件 設定手引き
MH-5000 のモデル紹介
石英製測定容器の NG 測定